アメリカのETV(UFO)研究のこれまでの進展 ~ロズウェル事件の真相も~

米国が極秘にUFO研究、過去を含め成果は?
1947年のロズウェル事件に始まり、現在も続いている

文:Nadia Dorake/訳:高野夏美
 2017年末、米国政府の機密情報が明るみになり、多くの人を驚かせた。説明のつかない飛行物体とみられる現象、いわゆる「UFO」の研究を米国防総省(ペンタゴン)が続けていたのだ。
 国防総省のプロジェクト「先端航空宇宙脅威特定計画(Advanced Aviation Threat Identification Program)」は2007年、未知の推進、静止、その他の高度な技術を用いていると考えられる、説明のつかない飛行物体を調査する目的で立ち上げられた。計画の知見を詳しく記した490ページの報告書はまだ公開されていないが、おそらく存在するらしい。
 このプロジェクトの存在自体が、宇宙人が地球にやって来ているという主張の裏付けだと考える人もいるかもしれないが、それは論理的な結論ではない。否定できない事実は、不可解な自然現象の観察は、間違いなく調査に値するということだ(「調査」が科学的になされる限り)。そしてこの計画は、米国政府が出資した初の高度な知的生命体の証拠探しにも程遠く、今のところ成果は見いだせない。(参考記事:特集「科学を疑う」
ルイス・エリソンド氏。
 国防総省のUFO調査事業を201710月まで率いていた。報道では、辞任の理由を「度を越した秘密主義と内部の反対勢力への抗議」と語っている。

UFOに関する計画は半世紀以上前に始まり、今もまだ行われている。これまでに、不可解な目撃情報や外来物体の評価、知的通信の信号をとらえるための上空のスキャン、はるか遠くの天体にいる生命の兆候を探し出せる機器の開発といった取り組みがなされてきた。(参考記事:「ロシア上空に謎の発光体、正体は弾道ミサイル」
UFOについて、科学的とされる検討に予算を投入することを政府が選んだという事実は、まったく驚くべきことではありません。とりわけ、国防上の脅威に大きくかかわる可能性がありましたから」と話すのは、セス・ショスタック氏。地球外生命探査(SETI)に取り組む研究所の上席天文学者だ。(参考記事:「【解説】宇宙生命探査、次はこうなる」
「連邦政府は長いことUFOに関心を持ってきました。1940年代後半に話題になった、誰でも知っているロズウェル事件の頃からです」とショスタック氏は話す。「関心の理由は、空中にいたと報告される謎の物体が、ソ連の最新の航空機かもしれないという懸念でした。今ならロシアか中国です」
UFOへの関心が実は国防以上のものであり、我々がいる小さな惑星に他の存在が訪れているのかどうか、米国政府が本当に知りたがっていたのだと思うかもしれません」。実際、米国の人口のおよそ3分の1が、こうした不思議な現象の一部は地球外からの訪問者によるものだと思っている。「だとしても、その可能性を調べるのに費やされた金額がささやかなものだという事実に、驚きは少しもありません」(参考記事:「宇宙人はいるのか? 火星で見つかった怪現象」
れよりも、もっと大きな問題があるとショスタック氏は話す。今回報じられたペンタゴンによる計画に注ぎ込まれた資金の大部分が、航空宇宙産業で成功した資産家、ロバート・ビゲロー氏が設立した企業に流れていたことだ。ビゲロー氏は宇宙人の訪問を長く信じており、近年、同氏の企業は風船のように膨らむ宇宙居住棟を開発している。ビゲロー氏とネバダ州選出のハリー・リード上院議員(当時)の会談後に始まった計画には、5年間で少なくとも2200万ドルが投入された(2012年に終了したとされるが、形を変えて存続しているかどうかはまだ明らかではない)。(参考記事:「米社が月面採掘計画、土地の所有権は?」
 新たに報じられた記事には、興味深い内容が山のようにある。ビゲロー氏の施設が保管しているという、地球上の物ではないような合金や、米海軍のパイロット2人が目撃した物体を撮影したとされる映像などだ。
 とはいえ、計画の成果について公になった大半の内容は、内部の関係者が自身の印象を記者に伝えたものなど、せいぜいでまた聞きの情報だ。リード上院議員のように、さらなる調査に値する有力な証拠があると主張する人もいるが、詳細は宇宙人と同じくらい不確かなままなのだ。
 米カリフォルニア大学バークレー校SETI研究センターの所長アンドリュー・シーミオン氏は、「説得力のある証拠による裏付けがなければ、現象のどんな描写も客観的とは言えません。そして、過去数十年間でさまざまなUFOや誘拐の現象が報告されていますが、そのような証拠はありません」と話す。「しかも、天文学者たちは種々の望遠鏡や技術を使い、生涯を費やして上空に目をこらしていますが、正体不明の宇宙船の写真1枚すら、いまだ撮れていないのです」(参考記事:「謎の「高速電波バーストの嵐」が発生、正体不明」
 宇宙人は実際にいて、私たちは彼らの訪問を受けているのか。答えを探す取り組みがこれまでに行われ、今も続いている。研究活動が始まった前世紀半ばは、まさに関心の最盛期だった。これまでの主な動きを紹介しよう。
1947
ロズウェル(モーグル計画)
 発生後、たちまちにしてあらゆるUFO陰謀論の元祖となったのがロズウェル事件だ。宇宙船が米ニューメキシコ州の砂漠に無残に墜落し、米国政府が宇宙船(および数体の宇宙人)を回収した出来事と説明されることが多い。1994年、米空軍はこの件について報告書を発表。回収した残骸は「かつて、ソ連の核実験の証拠を大気観測で検知するために極秘に行われていた風船作戦『モーグル計画』の一部だった」とした。(参考記事:「4つの科学的な陰謀説、信者はいまも」
19481952
プロジェクト・サインとプロジェクト・グラッジ
 当初は「サイン」、次いで「グラッジ」と命名された空軍出資のプロジェクトは、空飛ぶ円盤など正体不明の現象を精査するものだった。動機は冷戦と、9つの「円盤型の物体」がワシントン州上空で観察されたという1947年の報告だった。CIAは公式サイトにこう記している。「プロジェクト・グラッジの担当者たちは、UFOの目撃情報について、国外の高度な兵器設計または開発の証拠を見つけられず、UFOは米国の安全保障にとって脅威ではないと結論付けた。担当者らは、本プロジェクトの範囲縮小を勧告した。空軍が公式にUFOへの関心を示すこと自体が人々にUFOを信じさせ、『戦争が起こる』というヒステリックな空気を強めるという理由であった」
19521969
プロジェクト・ブルーブック
 それまでの2つのプロジェクトを引き継いだのがブルーブックだ。原因不明の航空宇宙事件の調査としては、わかっている中で最も長く、最も大規模になった。目撃報告を受けて調査した12618件のうち、大半は自然現象か航空機(テスト飛行中だった初期のU-2偵察機を含む)の誤認と判定され、701件が未確認のままとされた。報告書はこう結論を出している。「空軍によって報告、調査、評価されたUFOで、我が国の国家安全保障に何らかの脅威を示唆する物はない。『未確認』に分類された目撃例が、現代の科学知識の範囲を超える技術開発または原理によるという証拠は、これまで空軍に提出も発見もされていない。『未確認』に分類された目撃例が、地球外の移動手段であることを示す証拠もない」
1960
オズマ計画
 1950年に設立された連邦機関、米国立科学財団が出資した2000ドルのプロジェクトは、他の天体から来る知的な無線通信の兆しを探すという初の科学的調査だった。グリーンバンク天文台の望遠鏡を使い、天文学者のフランク・ドレーク(そう、筆者の父である)が無線通信に耳を澄ました。くじら座タウ星とエリダヌス座イプシロン星を周回していると考えられた惑星からの信号をとらえようとしたのだ。だが、収穫は得られなかった。
19661968
コロラド大学UFOプロジェクト/コンドン委員会
 空軍が資金提供したこの計画は、1968年にコンドン報告にまとめられた。「UFOの事例において、地球外との関連があるという有力な証拠はなかった」という結論であり、プロジェクト・ブルーブックおよびこれ以上のあらゆるUFO研究の中止を勧告していた。報告書に触発された米国科学振興協会(AAAS)はこの問題について会議を招集。天文学者のカール・セーガンとソーントン・ペイジが議論の内容を『UFO:ある科学論争』(原題『UFOs: A Scientific Debate』、未邦訳)という1冊の本にまとめた。(参考記事:「カール・セーガンを振り返る」
1970年代~80年代
CIA
、超自然現象や心霊現象を調査
 197080年代には、CIAUFO目撃に関わる多くの現象を調査した。超心理学的事件、心霊事件などと呼ばれるケースだ。「UFO研究における役割、1947-90年(いまだ消えない問題)」というCIAの報告書にはこうある。「CIAの担当者は、どういったUFO目撃例がソ連のロケットおよびミサイルの進歩を知る手掛かりになりうるか判断するためにUFO問題も考察し、その防諜面を再検討した」
19761993
SETI
HRMS
 SETIこと地球外知的生命探査に、NASAの予算がたった1度だけ計上されたことがある。それが、この10年ほどの期間だ。アレシボ天文台とゴールドストーン深宇宙通信施設のアンテナを使った探査に、年間1200万ドルもの額が投じられた。1990年ごろ、政府のSETI計画(NASAのエイムズ研究センターに本部を置いていた)は、「高分解能マイクロ波探査計画(HRMS)」に名称を変更。計画中止を回避するためだったが、1993年、ネバダ州選出のリチャード・ブライアン上院議員によって結局中止された。実際の観測が始まった直後のことだった
1990年代~現在
NASA
宇宙生物学研究所
 1998年に設立されたNASA宇宙生物学研究所は、同機関が実施する多くの事業の一つとして、地球以外のどこかに生命が存在する可能性を調べることを目的としている。所属する科学者たちが現在考えているのは、かつて火星に生命が存在したのか、エウロパやエンケラドスといった衛星を覆う氷の殻の下に生物がいるのか、そして仮に地球外生命を目撃できたとして、その時に「生命」の姿を認識できるのか――といったテーマだ。(参考記事:特集「宇宙生物学のいま」
今、そしてこれから
 連邦政府の補助金に頼りつつ続いている事業はほかにもある。太陽系外惑星だけでなく地球以外の生物圏も検出できる機器の開発や、地球上の生物や環境を地球外のそれに見立てて用いる研究などだ。 


世界で起きたUFO墜落事件 ~あまり知られていない事件簿2019/12/13https://www.youtube.com/watch?v=uDOINUhMTlw  
あまり知名度の高くないUFO墜落事件。しかし看過できるものでもないのですが、UFOにまつわる事件は世界各地にあるということでしょう。

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