「月の水」に関する見解です。

月の水の謎

 20099月にインド初の月探査機チャンドラヤーン1号は月の水を検出した。NASAは、チャンドラヤーン1号に搭載したレーダー機でのデータを元に、月の北極付近にある「永久影」を持つ40のクレーターに少なくとも数メートルの厚さの氷の層があり、総計6億トンの水が存在するのではないか、という見解を発表しているのである。
 月の地上は、大気が薄すぎて常に宇宙にさらされているため、水が表面にたまっていることはない。水があったとしても、すぐに水蒸気になり、太陽の光で分解されてしまう。そのため月の表面には、水は存在しにくい。だが、「永久影」のクレーターには、日光があたらないため、たまたまクレーターに落ちた水が、おそらく数十億年以上も氷となって眠っていたと考えられるのである。
 月に水をもたらしたのは、おそらく衝突した小惑星や彗星であろう。

月が誕生したころに極付近へ衝突した彗星が水をクレーターに流し込み、そのまま凍結してしまったと考えられる。(『月の都市伝説』並木伸一郎著 ()学研プラス発行20171月より)


【研究成果】月の内部に大量の水が存在か
AFPBB News

AFP=時事】乾燥して荒涼とした天体と長年考えられてきた月には、地中に驚くほど大量の水が蓄えられているとの研究論文が平成29724日、発表された。地球から月探査にやって来た人々が、この水でのどの渇きを癒やす日が来るかもしれないと研究者は話している。

 
論文の共同執筆者で、米ブラウン大学(Brown University)博士課程修了研究者のリ・シュアイ(Shuai Li)氏は、AFPの取材に「今回の研究では、周回探査機の観測データを用いて、月の内部の水を示す痕跡を月全体で確認した」と語った。「こうした水は、未来の月探査のための原位置資源として利用される可能性がある」のだという。リ氏は現在、米ハワイ大学(University of Hawaii)の所属。
 月は「完全乾燥」の状態にあるという科学者らの認識が変わったのは約10年前。米航空宇宙局(NASA)の有人月探査ミッション「アポロ(Apollo)計画」で地球に持ち帰られた小さなガラス粒子に、生命の必須要素の水が含まれる科学的証拠が発見されてからだと、リ氏は指摘する。
 ブラウン大のチームによる今回の研究は、月の表面全体に分布する多数の火山性堆積物に、周囲の領域に比べて「異常なほど大量の閉じ込められた水」が含まれることを明らかにしている。
 研究チームによると、月の表面下からのマグマの爆発的噴火によって形成されたガラス粒子で構成されると考えられる古代の堆積物で水が発見されたことは、月のマントルが驚くほど水に富んでいるとする説を大きく後押しするという。
 24日の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に発表された最新論文の主執筆者で、米ブラウン大学(Brown University)地球環境惑星科学科のラルフ・ミリケン(Ralph Milliken)准教授は「カギとなる問題は、アポロのサンプルが示しているのが、月内部の大半の状態なのか、もしくはそれ以外は『乾燥した』マントル内にある異常または特異的と思われる水が豊富な領域なのか、そのどちらなのかということだ」と話す。

■堆積物の分布がカギ

 ミリケン准教授は「水を豊富に含む堆積物の分布がカギを握っている」としながら、「こうした堆積物は月の表面に散在している。これにより、アポロのサンプルで見つかった水は、その場だけのものではないことが分かる」と指摘した。
 また「周回観測機のデータを調べることで、アポロや(旧ソ連の)ルナ(Luna)計画などの探査ミッションではサンプル採取が1度も行われなかった月面の広大な火山砕屑堆積物を調査できる」と説明し、「堆積物のほぼすべてが水の痕跡を示しているという事実は、アポロのサンプルは特異的なものではなく、月の内部の大部分に水が多く含まれる可能性があることを示唆している」とも述べている。
 月をめぐっては、太陽系の歴史の初期に火星くらいの大きさの天体が地球に衝突し、その際に飛び散った破片から形成されたと考えられている。しかし、水の形成に必要な水素が、この衝突で発生した熱を切り抜けることは不可能だと科学者らは推測していた。それでも「月の内部に水が存在する証拠が増えていることは、水が何らかの方法でこれを切り抜けたか、もしくは衝突直後の、月がまだ完全には固まっていない時期に、小惑星や彗星(すいせい)によって水が持ち込まれたことを示唆している」と、リ氏は話す。
 なお、火山ガラスに含まれる水はごく微量にすぎないが、堆積物は広大であり、この水を抽出できる可能性もある。
 このことについてリ氏は、「月の極にある影の領域に水氷が存在することが他の研究で示唆されているが、火山砕屑堆積物はそれよりアクセスしやすいと思われる」と述べ、「未来の月探査に訪れる人々が地球から大量の水を持ち込まなくても済むようになるのであれば、それは大きな前進となるものであり、今回の結果は新たな代替案の一つを示唆している」と続けた。【翻訳編集】AFPBB News

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